吠えてないで噛み付きなよ。

一人を超えてゆけ

 すごいですね。なんか逃げてると役に立つらしいよへーそうなんだフフンフンとか言ってるうちにとんでもないことになっていますね。猫も杓子も星野源です。 Strangerを聞いていたころにはまさかこんなことになろうとは思ってもみませんでしたよ。だいたいこういう時の有名人のファンというのは総じてめんどくさい元カノみたいになるのが世の常ですが、私も御多分に漏れず「俺は流行る前から星野源ちゃんと好きだった」「アタシの方があなたよりちゃんと彼のことをわかってる」「源は朝はコーヒーより紅茶派だから」みたいなことを周囲の人間に吹聴する気持ち悪い存在と化しています。だいたい「ちゃんと」ってなんだよ。好きな気持ちにちゃんともクソもありますかいなという話ですよ。皆胸を張って逃げ恥から星野源を好きになりましたと言いましょう。俺はお前らより前から星野源のこと評価してたけどな!!!!!!!バーカ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(元気良く中指を立てる)

 話が脱線したので元に戻しますが(中指をゆっくりと下ろす)、まして地上波ドラマでガッキーとキスですよ。どういうこと?「星野源はガッキーとキスしてお金を貰っている」という事実が未だに受け入れられない。初めてこの話をした時は脳みそがバグって謎のツボが押された結果5分ぐらい笑い転げていました。「仕事をするとお金がもらえる」(大前提)→「星野源は仕事をする」(小前提1)「星野源の仕事はドラマに出ること」(小前提2)「星野源はドラマの中でガッキーとキスする」(小前提3)→「星野源はガッキーとキスしてお金を貰う」(結果)ぐらいの分割をしないと頭の中がハテナマークで埋め尽くされてしまいます。これが法的三段論法です。嘘です。

 で、世間が空前の星野源ブームに沸いたり喘いだり濡れたり各自やっていく中、個人的な俗世の何やかんやがひと段落したので、そんな星野源のエッセイを買ったんです。

そして生活はつづく (文春文庫)

そして生活はつづく (文春文庫)

 

 このエッセイに通底するテーマとして「生活を楽しむ」っていうのがありまして、というのも星野源はありふれた日常を過ごしているときの空虚な感覚に堪えられず仕事を入れまくった結果ぶっ倒れたそうで、その時お母さんに「あんた生活嫌いやろ」と言われて「ああそっかあ俺生活嫌いだわ」と思い至り、なら生活を面白くしたろうやないかいということでこの本が綴られていくのですが(雑誌連載が元だそうです)。

 この「生活が嫌い」というワードが自分の中ですごいしっくりきまして、これまで私は「何で俺はこんな生産性のない無駄な作業に時間を費やさなきゃいけないんだ勝手に消化されろこんなクソみたいなタスク」みたいな意味の分からないキレ方をしながらシャツにアイロンをかけたり食器を片づけたり飯を食ったりしていたわけですが、こういうのって生きていく上ではどうしたってやっていかなきゃいけない作業なわけで、というかこんな認識は今まで俺を育ててくれたお父さんお母さんや全国の家事を担う方々に大変失礼なわけでして、それに気づいてからはただただ恥じ入るばかりでした。生活を楽しんでいない人間が魅力的になれるわけがないし、よりよく生きることができるわけもありませんよね。いつのまにか自分がひどくつまらない人間になっていたような気がしました。これは改善せんといかんばいということで1日1つ楽しかったことを頭の中で思い浮かべるようにしています。なんか疲れきったOLみたいですね。あとお米をよく噛んで食べている。お米はおいしい。

 このような話を友達にしたら「じゃあお前は演劇の才能も音楽の才能もないから、哀れな星野源だね」と言われました。正論で人の心の手術痕を抉るのをやめろ。そんなことはこっちは織り込み済みで話してるのがわかんねえのか今すぐ目の前の頭髪をむしってお前の内定先に送りつけたろかと思った(私には理性があるのでこのような破壊衝動を抑えることができます)。まあ間違ったことは言うてないんですよねこいつも、ガッキーとのキスはあくまで星野源の演劇と音楽の才能の産物ですからね、マッスルスパーク天と地が合わさることでマッスルスパークは完成するのであって何もないところからこのフェイバリットホールドが得られるわけではないのですよ。私何の話してたんでしたっけ。星野源がフェニックスにマッスルスパークを決めてキン肉星の王位を継承した話ですか?aikoの顔の傷をフェイスフラッシュで治すんですか?そんで結婚前夜にはテリーマンに顔ぶん殴られて「コングラッチュレーション!」って言われるんですか?もうキン肉マンの話はいいですか?現在連載中の新章で悪魔将軍の株が上がるたびに「二世のあのクソ情けない悪魔将軍ってなんやったん?」って気持ちになる話ももういいですかね?いい加減しつこいですね。 

 そういうことなので、才能のない哀れな星野源はせめて生活を楽しんでいこうと思ったわけですが、シャツにアイロンをかけたら久しぶりすぎて作業の段取りがぐちゃぐちゃになり、それに呼応してシャツもぐちゃぐちゃになったので、早速気持ちが無になりました。こちらからは以上です。人類は早くシャツの皺を全自動でいい感じにする何かを発明しろ。生活はクソ。

 


星野 源 - 恋 【MUSIC VIDEO & 特典DVD予告編】

 アウトロの楽器隊の掛け合いいいっすよね(申し訳程度の音楽への言及)